中学・高校生のための よのなかマーケティング・キャリア教育 授業テーマ集

中学・高校の「現代社会」「公共」「総合的な学習の時間」で、これから求められる「思考力・判断力・表現力」を養うための探求型授業で使える授業テーマ集です。 Copyright Masanori yano

コラム 「個別最適な学び」Courseraに見るオンライン授業のポイント<TEDの私なりのまとめ>

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写真AC より

みなさん こんにちは。

大変お久しぶりとなりました!が、いかがお過ごしでしょうか?

未更新の間も、多くの方に当ブログへ来訪いただき、

大変ありがたく思っております。

 

早速ですが、中央教育審議会初等中等教育分科会が「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~すべての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(中間まとめ)」を取りまとめ、令和2年10月7日付で公表されました。

 

www.mext.go.jp

社会の在り方が劇的 に変わる「 Society5.0 時代 」の到来や、新型コロナウイルスの感染拡大など先行き不透明な「予測困難 な時代」を背景にしつつ、先生方の働き方改革や、子供たちの多様化を課題にとして、これからの学校教育の在り方について方向性を示しています。

 

いろいろな視点から言及されていますが、

 

その中で「個に応じた指導」として、「指導の個別化」「学習の個性化」というものを取り上げてあります。

指導の個別化
○基礎的・基本的な知識等を確実に 習 得させるため,ICT の活用や 専門性の高い教師 による より支援が必要な児童生徒へのより重点的な指導などによる効果的な指導

○子供たち一人一人の 特性や学習進度等に応じ 指導方法・教材等の柔軟な提供・設定 を行うとともに, 自らの学習を調整しながら粘り強く取り組む態度を育成

 

学習の個性化
○基礎的・基本的な知識・技能や情報活用能力等の 学習の基盤となる資質・能力等を土台 として, 専門性の高い教師 による 個々の子供に応じた学習活動の提供

○自ら 学習を調整するなどしながら, その子供ならではの課題の設定 子供自身による情報の収集,整理・分析, まとめ・表現を行う等, 主体的に学習を最適化することを教師が促す

 

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)【概要】より抜粋引用

 

これからは「個別最適な学び」

といわれても、学校という環境でどのように進めていけるものなのでしょうか?

 

そのためのICTの活用…

 

新型コロナウイルス対策で、数年間の変化が一気に起こり、学校でもオンライン授業が盛んにおこなわれるようになりましたが、周囲の先生方や、キャリア教育コーディネーターにお聞きすると、

 

先生方は「仕事が2倍になって大変」と疲弊、

子供たちは「オンライン授業に飽きてきた」

 

という声を聞くことがありました。

 

これでは「個別最適な学び」どころではありませんね。

目指すものは、今行っているオンライン授業ではどうもなさそうです。

 

先日、キャリア教育コーディネーターが集まってのオンライン会議で、

 

「今のオンライン会議は、これまでの教室で行ってきた授業ができなくなって、それを補うものとして、やり方をそのままオンラインに変えただけ」

 

という話が出てきました。

 

「つまり、今のオンライン授業は、マイナスをゼロにしようという発想でやっているけれど、もっとオンラインの特徴を積極的に活用して、取り組まないとね。」

 

なるほど!と思いつつ、そういえば・・・ふと思い出したものがあります。

 

それが皆さんもご存じのCoursera<コーセラ>です。

Courseraは、世界のトップと呼ばれる大学がオンライン学習講座を提供している教育プラットフォームですね。

 

「最高の大学の最高の講師陣による最高の授業を世界のすべての人に無償で提供する」

 

そんなコンセプトのもと、現在世界で4,400以上のコースで7,100万人の受講生が学んでいるそうです。

Courseraは、基本的にオンライン授業ですから、ここに何かヒントはないかと思っていたら、TEDでポイントを語るプレゼンテーションがありました。

Courseraをアンドリュー・ン氏と共同創設をされたスタンフォード大学のコンピューターサイエンス学部の教授「ダフニーコラー」氏が、2012年にお話しされた「オンライン教育が教えてくれること」という動画です。日本語訳ついてます笑

 

 

www.ted.com

 

今回は、その中で語られているオンライン授業のポイントを私なりにまとめてみます。すでにご覧になって「何を今さら・・・」って先生方もおられると思いますが、「今だからできる、やるべき」と思うこともあろうかと思いますので、復習がてらお読みいただければと思います。

 

前提)オンライン授業で、本当の授業体験を!

まず大きな結論なんですが、Courseraのオンライン授業のコンセプトは、「本当の授業体験」。この「本当の授業」というのは、これまでの学校の教室の授業のことではどうもなさそうです。

 

動画の全体の脈絡を私なりに変えて説明しますが、

 

学校の講義では、講師が話をし終え、学生に簡単な質問をしたとき、80%の学生は講師が話していたことをまだノートに書いている最中、15%はフェイスブックを没頭中。一番前に座る賢い学生が、他の学生に考える間も与えず、さっさと答えてしまう。結果、多くの学生が質問に気づきもしないうちに、授業が先に行ってしまう。

 

こうならない授業「本当の」という言葉に込められていることではないかと私は思いました。

 

後半でマーク・トウェインと、ギリシャの著述家のプルタコスの言葉を引用して

マーク・トウェインは、

「大学は教師の講義ノートが学生のノートに書き写される場所」と言った。ダフニーコラー氏はそれに異を唱えつつ、

プルタコスは、

「心というのは、満たすべき入れ物ではなく、焚き付ける木のようなもの」

つまり、

授業とは、講義内容を詰め込むのではなく、対話を通じてクリエイティビティや想像力、問題解決能力を焚き付けることに時間を費やすべき。そんな教室(授業)を行う方法が、能動的学習(アクティブラーニング)だとダフニーコラー氏は話しています。そして、そのことは出席率や授業への参加の度合いを向上させ、結果成績も上がるという結果は明らかに出ていると。

 

まずここが最も大切な部分かと思いました。

そのうえで、どんなオンライン授業にするのかを見ていきます。

 

1.1つの授業をばらして、8分から12分で説明する小さなユニット教材に分割

 

授業の構成として、Courseraでは、1時間の授業をばらして8分から12分で説明する小さなユニット教材に分割されています。そのことで、学生は各々の背景や知識や関心に応じて、違う順序で教材を観ていくことができるようにしているようです。

ある学生は、授業の前提として知っておくべき知識を知らなかったら、その準備的教材から観る、あるいは、すでに理解し次へ進める学生は、より進んだ内容の教材を観る。

このことで個人にあったカリキュラムが組めるようになっています。

 

2.学習内容を本当に理解するための練習問題を繰り返し課す

Courseraでは、ビデオ教材を観たら、締め切りのある宿題が出され、それで成績が決まり、今通う学校の単位や就職の際の武器にもなる修了書が出されます。

 

ビデオ教材の中でも、数分ごとにビデオの内容について学生に質問が投げかけられます。その質問に正しい回答をしないと次へ進めないようになっています。質問は画面上に入力する形がとられ、成否はすぐに表示。間違えばもう一度ビデオを観たり補足説明を見て正しい答えを出せるようにしているようです。

 

繰り返しの復習問題は、他の学習方法よりも試験の結果を大きく向上させるそうです。

このあたりも学校の教室での授業では体験できないことですよね。

またに「個々に最適な学び」につながるのではないかと思います。

 

 

多くの情報を一気に伝えるのではなく、一つ一つの情報について理解できたのどうかを学生自身に確認させる「繰り返し復習」これもオンライン授業のポイントですね。

 

3.採点に学生相互の採点を入れる

 

数多くの学生の練習問題を一人の先生がどうやって採点するかですが、一つはテクノロジーを使っていますが、人文系、社会科学、経営学など批判的思考力を図るようなものにまだテクノロジーは適さないようで、そこでどうやって採点するのかを考えられた結果、学生が相互で採点することまた、自己採点することを取り入れているそうです。

 

Courseraの研究結果では、学生能力と教師の能力は相関していて、能力の高い学生の採点は教師の採点とほぼ同じだそうです。

また、この相互採点自体も、学生のいい学びにつながっていくそうです。

 

4.一人で自室でだけでなく、学生がコミュニティを作る

 

オンライン授業だから一人自室で行うだけでもないようです。Courseraでは学生がオンライン上にコミュニティを作り、お互いの成果を共有したり、協力できるような場が用意されているようです。またQ&Aフォーラムというものもあり、こちらに学生が質問を投げかけると、誰かが答えてくれるそうです。Courseraは世界中に受講者がいるのでたとえ深夜であっても、違う国の学生が答えてくれるとのことで、質問から回答までの平均時間は22分らしいです。

また、教師の働きかけなしに学生同士で、オンラインだけでなくリアルな場での学習グループが出来上がり、毎週集まって課題に取り組んでいる地域もあるそうです。

 

このあたりは大学生以上が多い?からできることなのかもしれませんが、ポイントは、「つながりのできる枠の多様さ」ともとらえています。学校で言えば「クラスを超える」、「学年を超える」、もっと言うと他の学校あるいは社会との「学校を超えた」つながりの中で、子供たちが学びを進めていく。これもオンライン授業の行う上で大きなポイントではないかと思います。

 

5.学習行動は、すべてデータに

オンライン授業には学校や先生にとって得られるものがあります。それは学習行動の「データ」。例えば、授業の中で学生が授業へ取り組む繰り返しの練習問題で、多くの学生が勘違いするところは明らかにわかるというものです。そのことで授業の内容を改善したり、学生に注意を促したりできる。Courseraには7,100万人の受講生がいるので、より正確につかめると思いますが、通常の学校でも時間はかかりますが、その傾向は見えてくるのではないかと思います。

 

6.個別指導で98%の学生を平均点以上に

 動画の中では、最後に個別学習の効果について言及されています。個々の状況と状態に合わせた学習指導を受けた学生の98%が、一般的な授業を受け、試験をした場合の平均点を上回ることができると言われています。Courseraは、それにどれだけ近づけるかを常に考えて行われているようです

 

いかがでしょうか?

 

2012年にすでにここまでのことを行っていることにまずは驚きですが、今回、中央教育審議会初等中等教育分科会が指し示す「個別最適な学び」「そのためのICTの活用」は、Courseraの考えや、オンライン授業を行うポイントが非常に参考になるのではないか

と思いました。

 

また、皆さんのご意見等お聞かせいただければ幸いです。

今日はここまで。お付き合いいただきありがとうございました。

 

では、また