特別コラム 「授業だけじゃないかも?オンラインの活用方法」
皆さん、こんにちは。
まだ、学校も再開されない中、どうお過ごしでしょうか?
今回は、先生方に向けたコラムを掲載します。
今、先生方の間で一番話題?となっているものに「オンライン授業」があるのではないでしょうか?先生の学校では、どのようにご対応されているのでしょうか?
ある学校の先生が「オンライン授業」に対し、個別の先生が各自で取り組むものではなく、学校としてどのように活用していくべきかということをお話になっていました。その通りですよね。
新型コロナウイルスの影響による学校休業で、学びの機会損失が叫ばれるようになりました。(各自治体でもタブレット端末の予算を前倒しにして児童生徒への配布をするという、「今頃?」と思うほど遅い動きになっているところもあるようですが)
とにかくこれを使って、学びの機会を作らなければいけない状況の中、既に導入されているところでは、各教科の先生が試行錯誤の中、オンラインの授業を行っていらっしゃるニュースを目にします。また、各教育支援の民間会社では、授業のコンテンツを無料開放して支援するなどの動きも活発です。
そんなこともあって、私もこの期間に「オンライン授業」ってどうできるのか、学校の先生やキャリア教育コーディネーターの皆さんと体験してみたり、様々な方面の方と話をしてみたりしてみました。
その上で、皆さんの意見も含め、自分自身でいろいろ考えてみて、私なりに思うことが出てきました。それならこう活用した方がと思うアイデアもいくつか出てきましたので、今回はそんな内容です。少し偏った見方をしていると思いますし、変わると思いますが現時点の意見です。
1.オンライン授業方法と私が思うこと
2.オンラインってなんだ?
3.だったら、こういう活用はどうか?
少し長くなります。ご関心のところだけでもお読みいただければと思います。
1.オンライン授業方法と私が思うこと
オンラインの授業方法は様々ありますね。いつくか上げながら、思うところを書いてみます
・講義型
各教科で習う新しい知識や、考え方を先生が講義しながら教えるという一般的な授業を、そのままカメラを通じてオンラインで行う方法。
なんですが…実際オンラインで行う場合、特にリアルタイムの授業の場合、黒板を使いながらカメラに向かって説明している先生を見ていると先生がとてもやりずらそうに見えます。
なぜかと言えば、生徒さんの反応が先生に伝わりにくそうなんですね。
通常の教室での授業であれば、先生がざっと教室を見渡せば、どの生徒さんが理解しているか、どの生徒さんがちょっとわかりづらそうなのか、あるいは、どの生徒さんが聞いてないのか…笑!先生ならすぐ判られると思います。そして、その反応に合わせて生徒さんに質問してみたり、わかりづらそうなところを違う説明方法でフォローしてみたりされると思うのですが・・・
オンライン授業となると、画面に映る生徒さんを見てもわからない。多くの場合、顔しか映ってないし、画面に多くの生徒さんが一度に映るともう見えない。1クラス30人が一つの画面に収まらないですしね。
この講義型って、オンラインで通常の授業と同じようにするのは難しいのではないか?特にリアルタイムの授業は。
講義型は録画でいいのでは?と思ったりします。
でも、事前に用意する手間や時間などない。
なので、最初のリアルタイムの授業を毎回録画しておく。
それをいつでも見ることのできる状態にしておく。
クラウドサービスで共有できるものがあります。
そうすれば、1回の授業でたくさんの生徒さんに教えることもできる。
いわゆる学習塾の授業の方式ですね。各生徒さんの復習・自習にもつながるものです。
そして…オンラインの特徴をさらに活かす。後ほど説明します。
・事前問題提示~課題提出~回答発表・説明型
あらかじめ、生徒の皆さんに課題となる問題を、動画、プリント、あるいはドキュメントデータなどで伝えておいて、一定期間後、先生へ課題を提出する方法。大学などではこの方法をされていたのではないでしょうか?一昔前「反転授業」という言葉もありましたね。
この方法は、生徒さん自身の主体的な情報収集や思考力を養うようなテーマに向いていそうです。講義型の知識授業であれば、復習のための宿題をするのに良いと思います。
先日、中学1年生を想定した算数の授業をこれで行ってみました。事前に問題を提示してもらい、その答えを参加者が事前に作成して、オンラインで発表しあいながら先生から回答の説明を聞くというものです。
できなくはないです。
やってみて思ったのは、
・宿題の提示にパソコンのスキルが必要なこと。(これも勉強ですが)
・オンラインソフトの操作スキルに差が出る(経験あるのみですね)
・発表の際に言葉としての表現力が必要なこと。(これを養える機会といえば、その通り)
・発言はオンラインの方がしやすい。(家にいる安心感と、教室のようにその場の空気に左右されにくい)
・進行役の時間管理と発言の促し方(ファシリテーション)の技術が必要。
ということを感じました。
これもオンラインの特徴をうまく使えそうですよね。
オンラインの特徴?あとで説明しますね。
・事前問題提示~事前学習~グループディスカッション
こちらは、これから求められる「アクティブラーニング」や「探求型授業」をオンラインで行う方法。生徒の皆さんに課題となる問題を、動画、プリント、あるいはドキュメントデータなどで伝えて、事前に自分の考えをまとめておいてもらい、オンライン上でグループに分かれてディスカッションを行いながら、グループとしての意見をまとめ、全体で共有・ディスカッションを行うという流れになります。
テーマは「答えのないもの」あるいは「たくさんの答えがあって、どれが最善かを参加者で決めていく」ようなものになるため、リアルタイムのディスカッションがポイントになります。
先日この方法を、キャリア教育コーディネーターのメンバーとやってみました。
ホントなら教室に集まって行う方がいいですね。
やってみて思ったのは、
・リアルの探求型授業と同様、必要な事前のゴール設定を明確にする。
(ゴール=このテーマを通じて何を学びとするのか)
・オンラインソフトの操作スキルに差が出る(経験あるのみですね)
・進行役の時間管理と発言の促し方(ファシリテーション)の技術が必要。
・適宜小グループ単位でディスカッションできるのでオンラインは便利。
・リアルの探求型授業と同様、各自の振り返りの時間を設けよう。
2.オンラインってなんだ?
さて、ここまでいくつかの授業方法を見てきましたが、今一度オンラインの特徴を考えてみます。(今さらですが)
というのも、
この「オンライン授業」というものが、現在の状況だから行う必要のある緊急措置的手段になっていますし、もっと言えば、「オンライン授業」という「手段」が「目的」にすり替わってしまいそうな気がするからです。
喫緊の目的は「学びの機会の創出」ですが、その先にあるのは何より「生徒さんの成長」です。
「オンラインやっているから大丈夫」「教科の遅れを取り戻せた(ある意味学校都合ですよね)」ではなく、
学校方針として「子供たちにどのようなチカラをつけたいか」を実現するために
オンラインを使うことで、「より学びが深まり、生徒さんのチカラが付いた」という視点で考えなければならないのではと思います。
さて、私が考えるオンラインの特徴は3つです。
1)時間・場所の制約がなくなる
わかりやすく言えば、環境さえ整えれば、
「いつでも」「どこでも」「だれとでも」
つながることができるということです。
「どこでも」というのは、今「オンライン授業」が行われている理由。
「いつでも(学べる)」という視点でいえば、生徒さん各自がどんな時にでも学ぶことのできるという環境がポイントとなります。「講義型は録画で」としたのは、それが理由です。
さらに言えば、録画を保管する際に短時間(5~10分程度)に切り分けて保管すると、生徒さんは学びたいところ、復習したいところ、わからないところだけを見てもらえる。ということにつながると思います。
よのなか事例ですが、あるドラッグストアでは、店内のマニュアルを細かく切り分けて数分単位で動画にした結果、見る人が増え、またその理解度が高まっているという新聞記事がありました。
そして、
「誰とでも」。
これは、学びたい教科やテーマが共通しているグループで学びができたり、もっと言えばクラスや学校、あるいは地域を超えてグループで学びができるということです。学年を超えて学ぶ、東京と沖縄の生徒さんが一緒に学ぶ、アメリカにいる日本人と学ぶということができるのがオンラインの特徴です。探求型の授業などは、こう言った側面からの授業づくりも有効ではないかと思います。
先生側に立つと、各先生の得意のテーマを多くの生徒に教えることができます。
2)頻度が高められ、より理解が深まる
以前から、テレビ会議やWeb会議を行っている企業があります。企業におけるこのような動きの主たる狙いは、出張などの「コスト削減」や「時間の効率化」となっていますが、さらに言えば、短時間だけども頻度を高めて、内容をより有意義なものにするというものも狙いとしてはあると思います。講義型の復習録画や多頻度のグループディスカッションなどオンラインだからやれることだと思います。
3)双方向のパーソナルなコミュニケーションは得意
講義型で1クラス全体の生徒の反応をつかむのは難しそうとしましたが、オンラインの特徴は双方向。特にパーソナルなコミュニケーションはオンラインの得意技です。とすれば、先生と生徒の1対1や、少人数の生徒と先生のやり取りについては、これまで以上に行うことが可能なのではないでしょうか?何といっても「いつでも」「どこでも」そして、「頻度高く」できるのですから…。
一人一人の生徒の状況を理解し、何かしらの声掛けやアドバイスを行えるツールとしてオンラインをとらえるとやれることはまだまだありそうに思います。
3.だったら、こういう活用はどうか
以上のことから、オンラインの活用を考えてみます。
結論としては「授業だけじゃないかも」というか、学校運営やクラス運営にも使う方がより良いのかもと。
「朝礼・終礼のオンライン」
これは、今もされているところが多いと思います。生徒の皆さんの毎日のコンディションを顔の表情や会話からつかめるし、何かしらのサポートもできる。まさに「どこでも」「頻度高く」できますよね。
さらに活用するとすると、この機会に「生徒さんの自主的な計画」を設定してもらい、どの程度できたのか振り返ることを盛り込むこともよいのではと思います。もうされてますか?
時間割を作って行う授業の他に、今日あるいは今週はこんなことに挑戦したいなどを各自に宣言してもらう。興味のある教科やテーマ、あるいは苦手な教科やテーマなどへの取り組みをどのようにして行うか(準備されたものがあればよいのですが)を自主的に計画してもらう。そして、それがどこまでできたか、やってみてどうだったかを振り返ってもらう。それをキャリアパスポートに記録に残す、クラスで共有し、相互で認め合う。
オンラインという発言しやすい環境で、これまで以上に各生徒さんのことが理解できるそんな取り組みができるのではないかと思います。
「質問会・フリー談義をやろう」
これは、されているのでしょうか?
講義型で生徒さんの反応がつかみにくい分、別にオンラインで質問会を実施してみる。先生には事前に決めた時間にオンラインの場に来ていただいて、質問のある生徒さんだけが集まってきて、質問に答えるというやり方です。各生徒のコンディションに合わせて回答し、そのことで理解度を高められないでしょうか?
もちろんお忙しい先生方ですが、講義を録画にすることで、クラス単位の授業などが効率化できたらこんなこともできるのかなあと考えました。
また、フリー談義も必要かと思います。普段の学校なら廊下でのすれ違いなどで少し気になる生徒に声掛けなどされているかと思います。今、そう言ったことがなかなか難しいとなれば、質問会ではなく、先生の職員室にいるような時間をオンラインに作って、雑談や相談をすることも、生徒さんにとってはストレスの軽減につながるのではないかと思います。
「”部活的”グループ学習」
学校休業にともない部活動もストップしているかと思います。また今後、教科履修の調整などから、「総合的な探求の時間」や「特別活動」などの時間短縮があるのではないかと想定しています。とはいえ、いずれも子供たちの成長にとって必要不可欠な時間。特に教科を超えて、社会とのふれあいや、チームワーク力の醸成、あるいはオンラインだからこそできるメディアリテラシーなどのテーマを設定し、関心のあるテーマへエントリーしてもらい、オンライン上でやり取りをする部活動的なグループ学習はどうかなと思います。クラスや学年を超えてできるものかと思います。
もちろん、そこにテーマに合わせた地域の方々や得意とする先生に加わって頂くことでより良い活動になるのではと思います。
「職員会議こそ、オンライン会議」
これも、もうされていると思いますが、やはり操作のスキルや時間管理を含めた進め方、促し方(ファシリテーション)になれないと限りある時間でうまくいかないのではないかと思います。誰かができたらいいということでもありませんし、これから、様々な場面で使う必要が出てくるので、練習を兼ねてやってみるのが良いかと思います。校務分掌担当ごとの先生間の情報共有にも効果があるのでは?
いかがでしょうか?
私の現状認識の甘さや、誤認等もあろうかと思いますが、「オンライン授業」という手段ばかりが先行しているような気がし、本当に学校におけるオンライン活用ってどういうものなんだろう?ということを考えました。皆様のご意見お聞かせくださいませ。
もちろん、通常のリアルな学校授業がもっとも重要であることは確かです。
その場に集い、目の前の先生や人から伝わる思いは、なかなかオンラインに変えることが難しい。ただし、オンラインの特徴をうまく使うことで、より理解が深まり、成長につながることもたくさんある。
つまりは、うまく組み合わせる。
今後も引き続き、リアルな学校授業と、オンラインをどのように組み合わせると、より生徒さん自身の学びが深まり、成長につなげるか考えてみたいと思います。
では、また。